相続に関する基礎知識⑧~秘密証書遺言の作成について~

今回は、秘密証書遺言の作成について、その作成の留意点を解説します。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言は、その文字通り、遺言を作成する人(遺言者)が、遺言内容を秘密にして遺言書を作成し、その遺言に封をして(封印して)公証人に確認してもらう形式です。

自筆証書遺言と同じく、遺言者本人が遺言書を作成しますが、その遺言を封印し公証人が確認(正確には公証人が申述)する点で異なります。
その際は証人2人以上が必要です。

このような手続きとなることから、秘密証書遺言と公正証書遺言のメリットを合わせ持ったような仕組みと言えるかもしれません。

秘密証書遺言の方式

秘密証書遺言の作成では、自筆による遺言と異なり、以下のとおり決められた手順があります。

(1)遺言書を作成する

自筆証書遺言と同じく、遺言者が遺言書を自分で作成します。
ただし、自筆証書遺言の作成の際に必須だった「自書」=自分で手書きする、は不要で、パソコンなどで作成しても問題ありません。
この点で、自筆証書遺言の手間に比べ、随分とハードルが下がると思います。
遺言書を作成したら、必ず署名と押印を行います。

(2)遺言書を封印する

作成して署名・押印した遺言書は、開けられないよう糊付けなどで封じ、必ず遺言書に押した印と同じ印で糊付けした箇所に押印します。これを封印といいます。

(3)公証人に「申述」を行う

遺言者が、公証人と証人2人以上の前で封印した遺言書を見せ、その遺言書が自分のものであるということと、遺言書を作成した人の氏名・住所を「申述」(申し述べる)します。
遺言書は遺言者の指示で別の人に作成してもらっても構いませんが、申述で作成者を述べる際、別の人に作成してもらったのであればその作成者の氏名・住所を述べます。
なお、話すことができない遺言者については、通訳者を介して申述することが可能です。

(4)公証人・証人・遺言者が署名・押印する

公証人が封印した封筒に、遺言書の提出を受けた日付と申述を受けた内容を記載します。
そのうえで、公証人・証人2人以上・遺言者は、封筒に署名・押印します。
これにより、秘密証書遺言の作成が完了します。

秘密証書遺言を作成するメリット・デメリット

秘密証書遺言は内容を知られることなく遺言を残せるのが最大のメリットです。それも含め、書遺言作成のメリットは以下のとおりです。

(1)遺言者の意思を必ず遺すことができる

あらかじめ遺言書を作成したことは、少なくとも証人により知られていますので、遺言者が遺言を遺していることが知られない=意思が伝わらない、ということを防ぐことができます。
かつ、自筆証書遺言では遺言書への改ざんの危険性がありましたが、封印されているため、改ざんの可能性は非常に低くなります。

(2)遺言の内容を生前は知られない

遺言書の内容が知られると、推定相続人の間で争いが生じる恐れもあり、遺言者にとってプレッシャーになるかもしれません。
この点、遺言の内容が分からない秘密証書遺言の形式であれば、証人に対しても含め、その内容を知られることがなく、意図しない親族間の争いなどにつながりにくいと考えられます。

(3)自分で手書きしなくてよい

上記で説明しましたとおり、自分で手書きする必要はなく、パソコンで作成可能です。
手書きは大変、と考える方にとって、最もメリットではないかと思います。

(4)他人に書いてもらってもよい

遺言者が自分の意思を他の人に話して書いてもらうこともできます。
その場合、申述では書いてもらった人の住所・氏名を述べます。
ただ、このメリットは(2)のメリット(生前に内容を知られないようにできる)を相殺してしまうものでもあります。

これに対し、デメリットは以下のとおりです。

(1)遺言した事実そのものは知られてしまう

証人が必ず必要な秘密証書遺言の形式では、遺言書を作成した事実そのものは知られてしまいます。
遺言書の存在そのものを知られたくない人には向かない仕組みです。

(2)秘密証書遺言の作成には費用がかかる

自筆証書遺言は自らの意思で自由なタイミングに作成でき、費用もかかりません。
これに比べ公正証書遺言と同じく、秘密証書遺言の作成では、公証人に対する報酬(数万円程度)など、多少の費用はどうしてもかかってしまいます。

(3)家庭裁判所の検認手続きが必要である

自筆証書遺言と同じく、それが法定された形式に則っているのかについて、家庭裁判所の検認手続き(チェック)を受けなければなりません。

これに対しては、時間もかかり(家庭裁判所に手続きを申し込んでから1~2か月ほど)、推定相続人などの関係者を集める手間もかかります。

秘密証書遺言を修正したい場合

秘密証書遺言に対しても加筆等は加えることができます。その場合、自筆証書遺言の定めが適用されます。

自筆証書遺言の修正の方法についてをご参照ください。

まとめ

秘密証書遺言について解説しました。

自筆証書遺言と公正証書遺言のメリットを合わせ持ったような形式ですので、遺言を作成する方のニーズによってはチョイスしても良い以下と思います。

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