相続に関する基礎知識②~遺言書の種類と遺留分~
相続手続きを知る上で欠かせない知識について、簡単に解説していきたいと思います。
第二回目は、遺言書の種類と遺留分についてです。
遺言と一言でまとめても、その種類はたくさんあり、どれが自分の意思を一番反映しやすいものか、作成にあたって取り組みやすいものかを考え、選択した方が良いと思います。
また、遺言を書くとしても、全ての遺産を自由に遺言で定めることはできず、「遺留分」という一定の制限があることを知っておかないと、遺言で遺したい意思と異なる遺産分割となる可能性が高いです。
このため、遺留分についても解説します。
なお、この記事は杉並区で相続・終活などをサポートする「とちもと行政書士事務所」が解説しています。
法定相続人や相続分については、以下の記事で解説しています。
遺言書の種類
相続の総論でも解説しましたが、遺言の形式は3種類に法定されています。
自らの手で書き出した「自筆証書遺言」と、公証人という公的な立場の人が本人の意思を証書にしたためてくれる「公正証書遺言」、さらに自らの手で書いた遺言を公証人などが確かなものであると確認し署名押印する「秘密証書遺言」の3つの種類です。
それぞれの違いについて、以下のとおりまとめました。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
作成の方法 | 遺したい遺言の全文は自筆で記載する必要あり。かつ、日付、氏名を自書し、押印。 なお、財産目録はパソコン作成可。 | 公証人役場にいる公証人が公正証書で作成(公証人役場に行くことができなければ、公証人は出張してくれる) | 自筆証書と同じく自書した遺言を封筒に封印し、遺言者・公証人・証人がそれを確認して署名押印。 |
作成に証人は必要か | 必要 | 2人以上の証人が必要 | 2人以上の証人が必要 |
裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
上記のとおり、自分で遺言書を書きたい場合、「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」のどちらかの方法を採ることになりますが、このどちらかの方法を採ると、その遺言が有効なのか裁判所の「検認」(けんにん)を受ける必要があります。
検認は家庭裁判所で行われ、法定相続人は家庭裁判所に出向き、検認に立ち会います。
また、検認で、法で定められた要件に合致していないとされた遺言は、有効なものであると認められない危険性があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言のメリットとデメリットは何でしょうか。以下にまとめました。
メリット | デメリット | |
自筆証書遺言 | ・費用をかけずに作成できる ・いつでも作成することができる | ・誤った書き方をすると無効となる危険性がある ・紛失や偽装などのリスクがある |
公正証書遺言 | ・間違いのない遺言手続きを実現でき、無効となる心配がほぼない ・紛失や偽装などのリスクがない | ・費用がかかる ・証人が2人必要 ・時間と手間がかかる |
上記のメリット・デメリットをどう判断するかですが、多少の費用がかかっても、ご自身の意思をしっかり伝えることのできる「公正証書遺言」の形で遺言書を作成することをおススメします。
遺留分
法定相続人は原則として、遺産のうちの一部を受け取る権利を有しています。これを遺留分といいます。法定相続人のうち、兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の権利者は、自らの遺留分より分割される遺産が少ない場合、遺留分を侵害されたとして「遺留分侵害額請求」を行う権利があります。
遺留分の割合は、原則として、法定相続分のさらに1/2です。
なお、相続人が直系尊属(本人の父母・祖父母など)のみの場合、法定相続分の1/3となります。
遺留分には請求期間が決まっており、相続開始および贈与・遺贈があったことを知ったときから1年、または相続開始から10年間を経過したときは、行使することができなくなります。
まとめ
今回は、皆様の気になる、遺言書の種類や遺留分などについて、細かく解説しました。
次に、相続に関する基礎知識として、相続開始後のスケジュール感と相続承認・放棄を以下の記事で説明します。
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