相続に関する基礎知識⑬~配偶者居住権のうち、配偶者短期居住権を解説~

被相続人の所有する物件に同居していた配偶者が、被相続人の亡くなった後もその物件に住み続けられる権利を「配偶者居住権」といいます。

この権利により、配偶者の方が引き続き安心して生活できることになります。

遺言書を作成する上でも、この権利を意識しておく必要があります。

今回は、配偶者居住権の第一弾として、短期的な居住権を得ることができる「配偶者短期居住権」について、解説します。

この記事は杉並区で相続・終活などをサポートする「とちもと行政書士事務所」が解説しています。
遺言書の作成に必要な基礎知識として、一旦作成した遺言を作り直したい場合の方法については、以下の記事で説明しています。

配偶者居住権とは

配偶者居住権は、被相続人である配偶者が亡くなった後、その配偶者が所有していた建物に引き続き住み続け、生活基盤を維持することができるようにするため、2018年の民法改正から設けられた制度です。

長年連れ添った配偶者が亡くなった場合、遺された配偶者は高齢であることが多いため、その時点からすぐに新しい住居を探し生活を始めるのは困難ですし、精神的な負担も大きいと考えられ、このような制度が作られました。

配偶者居住権はさらに2つに分かれており、

1 配偶者短期居住権

2 配偶者居住権

の制度があります。

大きな違いとして、1の配偶者短期居住権は短期的な居住権を得られるもので一時的な措置でしかなく、2の配偶者居住権は永続的に住み続けられる、という点にあります。

配偶者短期居住権の期限は、

A:居住建物について、配偶者を含んだ共同相続人間で遺産分割すべき場合

①相続開始の時から6か月を経過する日までの間、
②建物の分割によりその建物の帰属が確定した日、

B:上記以外の場合

建物を取得した者が配偶者短期居住権の消滅(立ち退き要求)を配偶者に対して求めた時から6か月を経過する日までの間、

までです。

配偶者短期居住権

配偶者短期居住権が認められる要件は、相続開始時点に、被相続人が所有する建物に無償で居住していて、被相続人が亡くなった現在も居住している配偶者、です。

詳しく見ていきます。

①相続開始時点

被相続人が亡くなった段階のことを指しています。

②被相続人が所有する建物

被相続人が所有する建物でなくてはならず、例えば、かつては被相続人の所有物だったが相続開始時点では別の所有者のものになっている、ということでは要件を満たしません。

なお、被相続人が賃貸していた物件に居住していた場合、それだけで配偶者短期居住権の要件を満たさないわけではなく、賃貸借契約そのものが相続の対象となるため、引き続き住み続けることができます。

③無償で居住していて、被相続人が亡くなった現在も居住している

被相続人である配偶者と一緒に住んでいることを指しており、配偶者との生活の基盤としての本拠であることが必要です。

完全に同居していれば問題になりませんが、例えば別荘などのセカンドハウスは生活の本拠といえないため、配偶者短期居住権が認められない可能性があります。

なお、被相続人が亡くなったときに、配偶者が病院に入っていた場合、その離脱は一時的なものに過ぎませんので、引き続き「居住している」ということができます。

④配偶者

法律で指している配偶者は、法律婚による配偶者に限定されています。

残念ながら、事実婚や事実上のパートナーの場合、配偶者短期居住権は認められません。

配偶者短期居住権に対する制限

配偶者短期居住権は、配偶者の生活を守るための制度であり、その行使には制限があります。

具体的には、以下のとおり制限されています。

①権利の譲渡の禁止

配偶者短期居住権は、配偶者に対して与えられる権利ですので、第三者に譲渡すること(他の人にその権利を譲ることで、他の人が配偶者短期居住の権利を得ること)はできません。

なお、登記することもできません。

②他の人への提供の制限

配偶者短期居住権は配偶者の生活を守るための制度ですので、本来の所有者が許可している場合を除き、第三者に賃貸借させるなど、提供することはできません。

なお、被相続人とともに居住していた住居に仕事場が併設されていた場合(住居兼店舗となっている物件の場合)、それまで使用されていた範囲であれば、引き続き仕事場として使用して良い、とされています。

③改修の制限

居住建物に対し、その形質を変えてしまうような改修はできません。

ただ、必要最小限の修繕、例えば雨漏りしている箇所を直すようなものについては、行っても良いとされています。

まとめ

今回は、配偶者居住権の第一弾として、短期的な居住権を得ることができる「配偶者短期居住権」について、解説しました。

次回は、永続的な居住権である「配偶者居住権」について、解説します。

杉並区で活動する「とちもと行政書士事務所」では、お客様のご要望を受け、速やかに相続手続き・終活手続きをサポートいたします。
杉並区・中野区・世田谷区・渋谷区・三鷹市など近隣にお住まいの方は勿論、遠方にお住まいの方に相続・終活などのサポートも随時行っておりますので、ぜひご相談ください。

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