相続に関する基礎知識⑪~遺言を作成できる年齢、能力を簡潔に解説~
遺言を行いたいとして、誰でも自由に遺言書を作成できるでしょうか。
法律では、遺言を作成できる人について、一定程度の年齢が経過していなければならない、自分の意思を表現できなければならないなど、条件を付けています。
そのようにしなければ、不十分な認識の中、誤った判断を行う危険性があり、これは遺言を遺す本人にとってマイナスであるからです。
今回は、遺言を作成できる年齢や作成したい本人の能力に関する制限などについて、解説します。
この記事は杉並区で相続・終活などをサポートする「とちもと行政書士事務所」が解説しています。
遺言書の作成に必要な基礎知識として、遺言に書いて良いことについては、以下の記事で説明しています。
遺言書を作成できる年齢は15歳から
民法では、「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と明記されています。
このため、どのような場合であっても、15歳に達していない人は遺言を作成することができません。
残念ながら、14歳以下の人は遺言することができず、仮に相続する財産を有していたとしても、それは法定相続分に従い、法定相続人に相続されることになります。
仮に14歳以下で作成した遺言書を遺し、未成年者(15~18歳に達するまで)が亡くなった場合も、14歳以下の際に作成した遺言であるため、その遺言は無効となってしまいます。
15歳以上となったら、成年に達していない場合でも、単独で遺言することができます。
親権を持っている人、例えば親の承諾がなくとも遺言書を作成することができ、親が後から了承するなども必要ありません。
本人の能力による制限
遺言を作成する人の能力に関する制限も定められています。
民法では、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」とされています。
このことにより、遺言を作成する人が本人の意思を表現できないような場合、その遺言は無効となってしまいます。
より具体的にいえば、例えば認知症で自分の意思を伝えられない方は、その時点で遺言を作成することはできません。
意思能力を有しない人の場合の遺言
意思能力を有していない人とは、「成年被後見人」「被補助人」「被保佐人」のことです。
認知症など様々な事情により単独で意思表示が難しい人は、裁判所の許可を得て、「成年被後見人」には「成年後見人」が、「被補助人」には「補助人」が、「被保佐人」には「保佐人」が、選任されます。
それらの人は遺言を作成できないでしょうか。
民法では、成年被後見人も、意思能力を欠いていない場合には、成年後見人の同意を必要とせず、単独で遺言できるとされています。
本人の意思能力を欠いているために成年後見人が選任されているにも関わらず「意思能力を欠いていない場合」とはどういうケースかというと、例えば認知症の方が一時的に意識の混乱等がなく、はっきりした事理弁識能力があると判断できる場合です。
この場合、医師2人以上の立会いの中で、成年被後見人が自ら遺言書を作るのであれば、その遺言は有効となります。
医師2人は、成年被後見人の作成した遺言書に、「遺言書を作成した時点で事理弁識能力を欠く状態ではなかった」という趣旨を記載し、署名・押印する必要があります。
「被補助人」と「被保佐人」については、医師の立会いなく、補助人や保佐人の同意がない中でも遺言を行うことができます。
まとめ
遺言を行うことができる年齢や、能力に対する制限について、解説しました。
遺言は間違った内容や形式で作成すると、無効となる危険性があり、十分に気を付けて作成しなければなりません。
杉並区で活動する「とちもと行政書士事務所」では、お客様のご要望を受け、速やかに相続手続き・終活手続きをサポートいたします。
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次回は、一旦作成した遺言を作り直したい場合の方法について、解説します。