【一般社団法人・定款②】定款で定めなければ効力が発生しないこと(相対的記載事項について)

定款には、必ず記載しなければならない事項が一般法人法(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)で定められています。

これ以外に、定款で定めておかないとその事柄について効力が生じない、という事項も存在します。これを相対的記載事項と言い、結構な数に上ります。

必要的記載事項と異なり、定めなければ定款全体が無効になるというものではありませんが、定款で定めておかないとその効力が発生せず、例えば社員総会で別に定めることはできません。

今回は、相対的記載事項について解説します。

目次

経費の負担

法人を運営するにあたり必要な経費の負担については相対的記載事項であり、あらかじめ定款で定めておかなければなりません。
うっかり定款に書き忘れると大変なことになります。

一般法人法では、第27条(経費の負担)で

第二十七条 社員は、定款で定めるところにより、一般社団法人に対し、経費を支払う義務を負う。

としていますが、この場合、「社員」の経費負担に関する規定ですので、他の方法での経費負担を想定しているのであれば、記載する必要はありません。
(会員に経費の負担を求めることはできなくなります)

ただし、税法上、非収益の事業について課税されないようにする(=収益事業のみ課税される)要件として、定款で会員の負担額を定めるか、社員総会で負担額を定める旨を記載していることが求められていますので、非収益事業に課税されないようにしたいのであれば、定款の記載は要注意です。

社員総会の権限

理事会を設置しない一般社団法人の場合、社員総会で様々に決議することができます。

具体的には、一般法人法で、

第三十五条 社員総会は、この法律に規定する事項及び一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議をすることができる。

とされています。この規定に基づき一般法人法で定めている事項以外のことを社員総会の決議事項とする場合、定款に定めておかなければならず、相対的記載事項に位置付けられています。

なお、上記規定に続き、一般法人法では、

2 前項の規定にかかわらず、理事会設置一般社団法人においては、社員総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

とされており、理事会を設置するタイプの一般社団法人については、社員総会の決議事項を自由に決めることを制限していることに注意してください。

なお、一般法人法において、社員総会で定めるべき決議事項とされているのは、以下の事項などです。

・理事、監事、会計監査人の選任・解任
・定款変更
・事業の全部譲渡
・解散
・合併の承認

社員総会の招集

社員総会を招集する権限は理事にあります。
しかし理事がその権限を有するにも関わらず社員総会を招集しない場合、一般法人法では、

第三十七条 総社員の議決権の十分の一(五分の一以下の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する社員は、理事に対し、社員総会の目的である事項及び招集の理由を示して、社員総会の招集を請求することができる。

と規定しています。

これは、議決権の10分の1以上を有する社員によって臨時の総会を招集することができる旨の規定ですが、この規定に対し、例えば「議決権の3分の1以上を有する社員」など、条件をより加重し招集しやすくすることも可能です。

そのようにしたい場合、定款に記載しなければならず、相対的記載事項となります。

総会の議決権の数

総会の議決権は一般法人法で、

第四十八条 社員は、各一個の議決権を有する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。

とされており、原則として各1票です。別の取り決めとする場合、定款に記載する必要があります。

社員総会の決議

総会の決議についても一般法人法で、

第四十九条 社員総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した当該社員の議決権の過半数をもって行う。

と規定されています。これと異なる取り決めとする場合、定款に記載する必要があります。

また、上記規定に続き、一般法人法では、

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる社員総会の決議は、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

と定められており、これは特別決議のことを指していますが、この規定より加重した決議要件、例えば総社員の議決権の4分の3など特別決議の要件を重くする場合も定款で定める必要があります。
(反対に、特別決議の要件を軽くすることは、定款に定めていてもできません)

役員の人数の上限

一般法人法では、理事の人数を3名以上と規定していますが、上限を決めておく場合、定款で定めなければなりません。

また、監事についても同様に、上限を決めておく場合は定款で定める必要があります。

役員の選任

理事や監事については、社員総会決議で諮る必要があります。

特に定めなければ普通決議となりますが、定款で定めることで、普通決議と異なる議決によることもできます。

理事長・業務執行理事の理事会報告

一般法人法では、

第九十一条 次に掲げる理事は、理事会設置一般社団法人の業務を執行する。
一 代表理事
二 代表理事以外の理事であって、理事会の決議によって理事会設置一般社団法人の業務を執行する理事として選定されたもの
2 前項各号に掲げる理事は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。ただし、定款で毎事業年度に四箇月を超える間隔で二回以上その報告をしなければならない旨を定めた場合は、この限りでない。

とされており、定款で報告の期間を変更することができるようになっています。

理事会報告の間隔を変えたい場合、定款に記載する必要があります。

理事・監事の任期の短縮

理事の任期は一般法人法で、

第六十六条 理事の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。ただし、定款又は社員総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。

と定められています。任期を短縮する場合、定款に記載する必要があります。

なお、任期を2年より長くしておくことはできません。

監事の任期も一般法人法で、

第六十七条 監事の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。ただし、定款によって、その任期を選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることを限度として短縮することを妨げない。

と定められていますので、任期を短縮する場合、定款に記載する必要があります。

監事の解任

監事を解任する場合、一般法人法第49条2項2号の規定により、特別決議に付す必要があります。

定款で定めることにより、通常の特別決議より加重の議決を行うことができます。

理事会の設置

理事会は一般社団法人の決定機関ですが、その設置は任意とされています。

第六十条 一般社団法人には、一人又は二人以上の理事を置かなければならない。
2 一般社団法人は、定款の定めによって、理事会、監事又は会計監査人を置くことができる。

この規定により、理事会を設置する場合には、あらかじめ定款で定めておくことが必要となります。

理事会の招集

理事会の招集通知は、理事会の日の1週間前までに、理事や監事に発出しなければならないとされていますが、定款で定めれば、これをさらに短く(例えば5日など)することができます。

理事会の決議

総会と同じく、理事会の決議も、その過半数が決議の要件とされており、これを定款で加重(上回る)することが可能です。

理事会の省略

一般法人法では、

第九十六条 理事会設置一般社団法人は、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

としており、理事が提案した事項を全ての理事が書面か電磁的記録(メールなど)で同意した場合に、理事会を開いて決議されたものとみなす規定を定款で定めることができます。

これは、いわゆる書面開催の理事会であり、対面で理事会を設置する余裕がない場合の手段となります。
この規定を定款に設けておかないと、毎回対面での理事会開催が必要となりますので、注意が必要です。

理事会の議事録

通常、理事会に出席した理事と監事の全員が、書面で作成された議事録に署名か記名押印しなければなりません。

これを定款で定めることにより、理事の署名等に代わり、代表理事の署名等のみとすることが可能です。

理事全員から署名等をとるには意外と手間になりますので、代表理事のみの署名等で足りる形とした方が良いでしょう。

会計帳簿の閲覧等の請求

一般法人法では、

第百二十一条 総社員の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する社員は、一般社団法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。

と定めており、社員に会計帳簿の閲覧請求の権限を与えていますが、この基準を、法の定める10分の1以上より低い割合にすることも可能です。

その場合には、定款で定めておく必要があります。

基金の設置

一般法人法では、一般社団法人が基金を置くことを認めていますが、その場合、手続き等について定款で定めておかなければなりません。

第百三十一条 一般社団法人(一般社団法人の成立前にあっては、設立時社員。次条から第百三十四条まで(第百三十三条第一項第一号を除く。)及び第百三十六条第一号において同じ。)は、基金(この款の規定により一般社団法人に拠出された金銭その他の財産であって、当該一般社団法人が拠出者に対してこの法律及び当該一般社団法人と当該拠出者との間の合意の定めるところに従い返還義務(金銭以外の財産については、拠出時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務)を負うものをいう。以下同じ。)を引き受ける者の募集をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定款で定めなければならない。
一 基金の拠出者の権利に関する規定
二 基金の返還の手続

定款変更、事業の全部譲渡、解散

定款変更、事業の全部譲渡、解散は、社員総会の特別決議ですが、これを定款で加重(上回る)することが可能です。

解散した場合の清算期間

解散して清算期間に入った場合に、清算人から構成する清算人会(理事会のようなもの)または監事を設置する予定の場合には、定款にその旨を定めておかなければなりません。

第二百八条 清算法人には、一人又は二人以上の清算人を置かなければならない。
2 清算法人は、定款の定めによって、清算人会又は監事を置くことができる。

また、通常、解散時の理事がそのまま清算人になりますが、そうではなく、別の者を清算人にする予定の場合には、定款にその旨を定めておかなければなりません。

第二百九条 次に掲げる者は、清算法人の清算人となる。
一 理事(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
二 定款で定める者
三 社員総会又は評議員会の決議によって選任された者

さらに、清算時に残った残余財産について、定款に帰属先を定めることができます。

第二百三十九条 残余財産の帰属は、定款で定めるところによる。
2 前項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、その帰属は、清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって定める。
3 前二項の規定により帰属が定まらない残余財産は、国庫に帰属する。

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