相続に関する基礎知識④~公正証書遺言作成に必要な書類について~
公正証書遺言は、法令で手続きが厳格に定められています。
具体的には、
①遺言者本人が公証人と証人2名の前で遺言の内容を口頭で告げ、
②公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめ、
③遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、
④遺言公正証書として作成することとなります
(日本公証人連合会ホームページより引用)
証人について
証人2名は、公正証書遺言を作成したい人が適切な人にお願いして連れてくる必要がありますが、誰でもなれるわけではありません。
未成年者と、推定相続人(相続関係を推定される親族など)、受遺者(財産をもらい受ける人)、またはこれらの配偶者および直系血族(祖父母・両親・子・孫など)は証人になることはできない、とされています。
これらの人が証人になることのできない主旨は、遺言を残そうとする人(被相続人)に、自分たちの都合の良い遺言を書かせないようにするためです。
なお、公証人の配偶者、四親等以内の親族、書記および使用人も証人になることはできません。
通常、証人としては、遺言を作成したい人の近しい人(友人)などが想定されていますが、個人的なことを遺言に残すため、客観的な第三者として、行政書士や司法書士、弁護士などの士業者に依頼するケースが多いといえます。
公正証書遺言の作成に必要な書類
公証人役場に赴いて公正証書遺言を作成する際、持参しなければならない書類は以下のとおりです。
①遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書(本人確認として必要)
印鑑登録の証明書を自治体の窓口で取得しておきます。ただし、印鑑登録証明書に代えて、運転免許証、旅券、マイナンバーカードなどの、官公署発行の顔写真付き身分証明書を持参することで、遺言者の本人確認資料にすることもできます。
②遺言を残したい本人と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本
遺言を残したい本人を中心とし、相続人の関係が分かる戸籍謄本・除籍謄本を持参します。これらも自治体で取得しておきます。
相続人と推定される人の範囲の中で、両親が無くなっている場合、その祖父母の謄本も取る必要があり得るなど、すべての相続人の謄本を取得するのには手間がかかります。
③(不動産が相続財産である場合)その登記簿謄本と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
その不動産の存在を立証する登記簿謄本(登記事項証明書)と、その価格が推定できる固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書を持参します。
固定資産評価証明書は固定資産税を納税している役所で入手でき、23区内であれば都税事務所、それ以外であれば区市町村の納税窓口で発行を申請します。
手元に固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書があれば、それで済みます。
④(財産を相続人以外の人に遺贈する場合)遺贈したい個人(相手)の住所が分かるもの。法人の場合には、その法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)
遺贈したい相手が個人である場合、その人の住所が分かるものを持参します。例えば、住民票が最も望ましいですが、手に入らない場合、その人の住所が記載された郵便物でも構いません。
法人に遺贈したい場合、法人の登記簿謄本を法務局で発行してもらいます。
⑤(口座にある現金が相続財産である場合)その口座の預貯金通帳など、またはその通帳のコピー
銀行口座などにある預金を相続させたい場合、その通帳そのものか、その通帳のコピーを持参します。
金額を確定させる必要がありますので、しっかり記帳した上で持参、またはコピーして持参します。
⑥(証人をご自身で用意する場合)証人の情報に関するメモ
証人をご自身で様子する場合には、上記以外に、証人に関する情報(証人予定者の氏名、住所、生年月日および職業などの個人情報)のメモ書きも必要です。
公証人役場との調整
上記の書類等を揃えて公証人役場に相談の連絡を入れます。
直接訪問するか、電話でのやり取り(と書類の郵送など)を行うと、上記の書類から得られる情報を用い、公証人が公正証書遺言の案を作成してくれます。
案の中味は事前に提供されますので確認し、遺言を作成したい人ご自身の意向が反映されているかをしっかりチェックします。
そのうえで、公証人役場に証人2人とともに出向き(公証人が出張してくれる場合もあります)、公正証書遺言の案に押印等を行うことで、公正証書遺言が完成します。
完成した公正証書遺言は法務局に保管されるとともに、公正証書遺言を作成した本人にも交付されます。