【旅館業】墨田区の旅館業許可申請で注意することについて

旅館業の許可の基準については、許可する各自治体でかなりの違いがあります。
それぞれの自治体では独自の条例で細かく定めを作っており、その自治体の条例などに合った客室要件などを満たす必要があります。
特に東京の23区では、本来は都道府県業務である旅館業の許可業務を23区の区役所が担っており、それぞれの区独自の基準をしっかり把握して申請しないと、思わぬ壁にぶつかって許可を得られない危険性があります。
今回は、墨田区の条例等の基準から、申請時に注意した方が良いことを解説します。
墨田区の特徴的な要件について
(1)「標識の設置」や「説明会の開催」が必須
墨田区では、旅館業許可を得たい物件の近隣住民に対し、「標識の設置」または「説明会等の開催」を行うことを必須の要件としています。
標識の設置については、あらかじめ定められた大きさ(縦横60㎝以上)の標識を、旅館業許可申請をしようとする日の少なくとも15日以上前に、営業予定地の道路に接する部分(2以上の道路に接するときは、それぞれの道路に接する部分)に、地上から標識の下端までの高さがおおむね1mとなるよう設置することとされています。
また、標識を設置した日から5日以内に、「標識設置届」を墨田区保健所に提出しなければなりません。
説明会の開催については、原則として周辺住民等に対し、説明会の開催または戸別訪問により、旅館業に係る営業計画について説明する必要があります。
ここでいう周辺住民等は、施設内・同じ敷地内・敷地の境界から10m以内に、建物を所有しているか建物に居住している住民など、と定められています。
建物が道路に接している場合、その道路を挟んだ向かいにある建物も周知対象です。
営業計画も例示されており、周知事項を確認しておく必要があります。
また、説明会や戸別訪問を行うより5日以上前までに、開催日時及び場所を見やすい場所に掲示するとともに、文書の配布などで周辺住民等に周知しなければなりません。
説明会の終了後は、「説明会等報告書」を墨田区保健所に提出します。
(2)トイレを各階に配置し、防虫及び防臭の設備並びに手洗設備を有すること
墨田区では、旅館業を営みたい施設について、条例第10条第8号アで「便所は、次の基準によること。(ア)各階に設置し、防虫及び防臭の設備並びに手洗い設備を有すること。」とされています。
これは、各フロアに手洗い付きのトイレを用意しなければならない、ということです。
複数のフロアがある施設で旅館業を営業したい場合、各フロアにトイレが必要で、意外とハードルとなる可能性があります。
(3)施設全体の定員に対して、施設全体のトイレ便器がおおむね必要数以上設置されていること
複数フロアで旅館の営業をしたい場合、トイレの便器数に定めがあり、これを上回る定員とすることはできません。
必要な便器の数は、以下のとおりです。
5人以下 2つ
6人以上10人以下 3つ
11人以上15人以下 4つ
16人以上20人以下 5つ
21人以上25人以下 6つ
26人以上30人以下 7つ
それ以上 30人を超えて10人(10人に満たない端数は、10人)を増すごとに1を7に足し合わせた数
※301人以上の場合、300人を超えて20人(20人に満たない端数は、20人)を増すごとに1を34に足し合わせた数
墨田区の社会教育施設等に関する基準について
旅館業を営む場合、その施設の周辺に学校、幼保連携型認定こども園、児童福祉施設、社会教育施設(図書館や公民館等)などがあると、その施設の管理者に対し、旅館業を開業させて良いか確認することになっています。
この確認は、自治体が自ら施設を所管する役所に対して行います。
その場合、旅館を営みたい施設からどれくらい離れていると確認の対象になるのかは、それぞれの自治体で独自に基準を定めています。
墨田区の場合、敷地からおおむね100mとされています。
フロントを置かない場合の代替措置について
旅館業を営む場合でハードルとなるのが、フロントを置かない場合の代替措置です。
墨田区の場合、フロントを置かない場合はおおむね徒歩10分以内に施設に駆け付けられる体制が求められます。
旅館を営みたい方自身の家が近いなどであれば問題ありませんが、なかなかそのような条件を満たせる物件を探すのは難しいかもしれません。
駆け付け体制を民泊専門の事業者などに委託することもできます。その場合は、旅館を営みたい施設からかなり近い場所に事務所を有する事業者を探す必要があります。
フロントを置かない場合、ビデオカメラ等を設置して本人確認、受付、宿泊者の出入り状況の確認を行うことも必要です。
加えて、緊急時に宿泊者が宿泊施設内からフロント代替場所に通話できる機器を設置しなければなりません。
墨田区の客室の基準について
墨田区の旅館業に関する条例では、他の区に比べ客室の基準に難しいハードルはありません。
自治体によっては条例で部屋の照明のルクス(明るさ)を指定したり、室内の二酸化炭素濃度の基準を設けたりしていますが、墨田区の場合は特別な数値基準はありません。
客室には窓が必須ですが、窓の面積について、おおむね床面積の10分の1以上であることも必要です。
客室の最低限の床面積は、7㎡(寝台を置く客室の場合、9㎡)以上とされており、他の自治体の基準と変わりありません。
ただし、客室の幅員は2m以上あることが望ましい、ともされています。
トイレには手洗いの設備が必要です。
これは、いわゆるロータンク式便器の上部に設置されている給水口で構いません。
近隣100m程度の範囲に学校、幼保連携型認定こども園、児童福祉施設、社会教育施設(図書館や公民館等)などの施設がある場合、施設の内部が見えないよう、囲いなどの対応が必要です。
なお、墨田区では、あえて規則等でサウナを設置する場合の規定も設けており、サウナを構築したい場合は十分な注意が必要です。
洗面設備、トイレの数について
洗面設備やトイレを敷設していない客室の場合、宿泊者の人数に応じた数を用意しておく必要があります。
・洗面設備
以下の数の給水栓が必要です。
5人以下 1つ
6人以上10人以下 2つ
11人以上15人以下 3つ
16人以上20人以下 4つ
21人以上25人以下 5つ
26人以上30人以下 6つ
それ以上 30人を超えて10人(10人に満たない端数は、10人)を増すごとに1を6に足し合わせた数
・トイレ
トイレは男女を別とし、以下の数が必要です。なお、男女合計数であり、その内訳は旅館を営みたい方に任されています。
5人以下 2つ
6人以上10人以下 3つ
11人以上15人以下 4つ
16人以上20人以下 5つ
21人以上25人以下 6つ
26人以上30人以下 7つ
それ以上 30人を超えて10人(10人に満たない端数は、10人)を増すごとに1を7に足し合わせた数
※301人以上の場合、300人を超えて20人(20人に満たない端数は、20人)を増すごとに1を34に足し合わせた数
まとめ(墨田区の特徴的な点)
墨田区で旅館業の許可を申請する場合に気を付ける点について解説しました。
墨田区の場合で特徴的なのは、事前に周辺住民等への対応が必要なこと、トイレを各フロアに置かなければならないこと、です。
特に周辺住民等への対応については、実際に説明会や戸別訪問を行う前に更に周知を行わなければならないなど、他の区よりも入念に実施することが求められています。
とちもと行政書士事務所では、旅館業許可・民泊届出の許可取得の実績が豊富にあります。
お困りごとがありましたら、何なりと気軽にお問い合わせください。