【旅館業】荒川区の旅館業許可申請で注意することについて

旅館業の許可の基準については、許可する各自治体でかなりの違いがあります。

それぞれの自治体では独自の条例で細かく定めを作っており、その自治体の条例などに合った客室要件などを満たす必要があります。

特に東京の23区では、本来は都道府県業務である旅館業の許可業務を23区の区役所が担っており、それぞれの区独自の基準をしっかり把握して申請しないと、思わぬ壁にぶつかって許可を得られない危険性があります。

今回は、荒川区の条例等の基準から、申請時に注意した方が良いことを解説します。

荒川区の特徴的な要件について

(1)「標識の設置」や「説明会の開催」が必須

荒川区では、旅館業許可を得たい物件の近隣住民に対し、「標識の設置」や「説明会の開催」を行うことを必須の要件としており、さらに一定の条件下では、近隣住民と協定を締結しなければならない場合もあり、高いハードルとなっています。

標識の設置については、あらかじめ定められた大きさの標識を、旅館業許可申請をしようとする日の少なくとも30日前に設置し、いかなる場合も許可を受ける日まで撤去することはできません。
また、標識を設置した日から7日以内に、「標識設置届」を荒川区役所に提出しなければなりません。

説明会の開催については、説明会を開催する少なくも7日前までに、近隣住民に対して文書の配付等で説明会の日時や場所を周知しなければなりません。
ここでいう近隣住民は、施設内や同じ敷地に住んでいる人、敷地の境界から20m以内に住んでいるか事業を行っている人など、あらかじめ定められています。
説明会の終了後は、「説明会報告書」を荒川区役所に提出しなければなりません。

なお、一定の条件によっては、近隣住民と旅館業開業に関する協定の締結または同意書の作成が必要な場合もあります。

(2)旅館を営む施設と、他の住居施設を区画し混在しないようにする

荒川区では、旅館業を営みたい施設について、「当該建物の当該施設の部分が居住部分当を区画され、かつ、当該施設の廊下、階段、出入口その他規則で定めるものに宿泊者及び当該居住者その他規則で定める者の共有に供する部分がない構造とすること」が要件とされており、マンションなどの集合住宅で民泊を行いたい場合、これが非常に大きなハードルとなります。

分かりにくいため簡単に要件を説明しますと、旅館部分は他の住居施設と明確に区分され(これは当然ですが)、そのうえで、旅館業で使用する廊下、階段、出入口、昇降機(エレベーター)、避難施設は、他の住居施設と共有することができない、ということです。

集合住宅の一室で民泊を行いたくても、エレベーターや階段が共有なのは当然のことですが、それらを共有して旅館業に使用できないことになります。

このため、荒川区ではマンション等で旅館業を行うことが事実上難しい状況で、どうしても荒川区で旅館業を営みたい場合は一軒家を利用することとなります。
(一軒家であっても原則として全階を旅館業で使用する必要があります)

このように、荒川区での旅館業開業には、申請前から多くのハードルがあります。

荒川区の社会教育施設等に関する基準について

旅館業を営む場合、その施設の周辺に学校、図書館、公園、児童遊園などがあると、その施設の管理者に対し、旅館業を開業させて良いか確認することになっています。
この確認は、自治体が自ら施設を所管する役所に対して行います。

その場合、旅館を営みたい施設からどれくらい離れていると確認の対象になるのかは、それぞれの自治体で独自に基準を定めています。

荒川区の場合、敷地からおおむね100mとされています。

フロント必須!代替措置なし

他の多くの区では、フロントを置かない場合に近くから駆け付ける体制を整備しておくなどの措置を用意しておけば、旅館業を営むことができます。

しかし荒川区の場合、フロントを置かないことにはできず、必ず職員の常駐が求められています。

通常、旅館業を開業したい方本人か民泊専門の事業者などが緊急時に物件に駆け付ける体制を整備しておくことでフロント設置要件をクリアしますが、荒川区ではそれができませんので、非常に大きなハードルとなります。

これに付随し、常駐する職員のための部屋も用意しなければなりません。この部屋は、明確に客室と壁などにより分ける必要があります。

さらに、一定の広さ(床面積6.3㎡以上)のロビーの設置も必須となっています。

これらの条件を満たすには、民泊というより一般的なホテル・旅館での開業を目指さざるを得ず、民泊を行いたい方のニーズには合致しないと思います。

荒川区の客室の基準について

荒川区の旅館業に関する条例では、他の区に比べ客室の基準に難しいハードルはありません。
(ただし、前述のとおり、そもそも施設そのものに多くの要件が定められており、それらを満たす必要があるためのハードルが非常に高いです)

自治体によっては条例で部屋の照明のルクス(明るさ)を指定したり、室内の二酸化炭素濃度の基準を設けたりしていますが、荒川区の場合は特別な数値基準はありません。

客室の最低限の床面積は、7㎡(寝台を置く客室の場合、9㎡)以上とされており、他の自治体の基準と変わりありません。

トイレには手洗いの設備が必要です。
これは、いわゆるロータンク式便器の上部に設置されている給水口では足りず、しっかりとした流水式の手洗い設備とする必要があります。

近隣100m程度の範囲に学校、幼稚園、保育園、児童遊園、図書館、児童館などの施設がある場合、施設の内部が見えないよう、囲いなどの対応が必要です。

まとめ(荒川区の特徴的な点)

荒川区で旅館業の許可を申請する場合に気を付ける点について解説しました。

荒川区の場合で特徴的なのは、事前に近隣住民への対応が必要なこと、フロント必置なことと、旅館業を営みたい部屋とそれ以外の住居の通路等を共有にしてはいけない点です。

いわゆる民泊での開業はかなりハードルが高いため、荒川区で旅館業を営みたい場合、民泊ではなく一般的なホテル・旅館を開業するイメージで準備を進める必要があります。

とちもと行政書士事務所では、旅館業許可・民泊届出の許可取得の実績が豊富にあります。

お困りごとがありましたら、何なりと気軽にお問い合わせください。

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