東京で【飲食業】の許可を受ける具体的な方法について

飲食店を出店するには、飲食業の許可を行政から取得する必要があります。
この許可は、「食品関係営業許可」といい、許可申請先は保健所です。
一般的に保健所は都道府県が運営しているものですが、東京の場合、保健所は東京都が直接運営しているところと、身近な区市が運営しているところの2パターンあります。
具体的には、23区内はそれぞれの区が、多摩地区は八王子市と町田市が保健所を運営しており、他の地域は東京都が運営しています。
今回は、東京で飲食店の許可を得るための方法について、解説します。
飲食業の定義
飲食業とひと口にいっても、いろいろな種類があります。
次に挙げる営業については、食品衛生法で定めされた営業許可が必要となります。
分類 | 業種 |
---|---|
調理業 | ・飲食店営業 ・調理の機能を有する児童販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業 |
製造業 | ・菓子製造業 ・アイスクリーム製造業 ・乳製品製造業 ・清涼飲料水製造業 ・食肉製品製造業 ・水産製品製造業 ・氷雪製造業 ・液卵製造業 ・食用油脂製造業 ・みそ又はしょうゆ製造業 ・酒類製造業 ・豆腐製造業 ・納豆製造業 ・麺類製造業 ・そうざい製造業 ・複合型そうざい製造業 ・冷凍食品製造業 ・複合型冷凍食品製造業 ・漬物製造業 ・密封包装食品製造業 ・食品の小分け業 ・添加物製造業 |
処理業 | ・集乳業 ・乳処理業 ・特別牛乳搾取処理業 ・食肉処理業 ・食品の放射線照射業 |
販売業 | ・食肉販売業 (包装品の販売のみの場合を除く) ・魚介類販売業 (包装品の販売のみの場合を除く) ・魚介類競り売り営業 |
営業を行うには、まず、営業を行いたい場所を所管する保健所に営業許可申請を行います。
保健所が定めている施設基準に合致した施設をつくり、営業許可を受けることが必要です。
許可を得た後も、施設や設備が基準どおりに維持管理されているかを常時点検するとともに、食品の扱い等にも十分留意して、安全で衛生的な食品を提供することが必要です。
また、許可には有効期限があり、期限満了前に継続の手続きを行うことが必要です。
期限満了の日の約1か月前には手続きすることになります。
営業許可申請の手続きについて
飲食業関係の営業許可申請については、概ね以下の手順で進めます。
- 申請前にやっておくこと
自分がどの業種を営む予定か判断します。
また、衛生的な管理運営を行うために、施設ごとに食品衛生責任者を決めておく必要があります。
誰を食品衛生責任者にするか、あらかじめ決めておきましょう。
★食品衛生責任者とは
以下の資格を有する人は食品衛生管理者に該当します。3の講習受講が最も簡単です。
1 | 栄養士、調理師、製菓衛生士、食鳥処理衛生管理者、船舶料理士、と畜場法に規定する衛生管理責任者/作業衛生責任者の資格を有する者 |
2 | 食品衛生責任者又は食品衛生監視員となることができる資格を有する者 |
3 | 食品衛生責任者の資格取得のための養成講習会修了者 ※例えば、一般社団法人東京都食品衛生協会が企画する講習会 |
加えて、水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合、水質に問題ないか検査を行うことが必要です。
手配しておきましょう。
- 保健所に事前相談
施設の工事着工前に施設の設計図等を持参のうえ、保健所に事前相談に行きます。
飲食業の許可には、店内の衛生管理が適切なのかをチェックされます。
例えば、水回りについて、食品や食器を洗浄する「洗浄設備」のほか、調理人が手指を綺麗に洗うことのできる「手洗設備」も必要で、これは一つにできません。
また、手洗設備は直接カラン(水を出すハンドル)を触らなくても水が出る構造であることも求められます。
具体的には、手で触って開栓するカランではなく、手を近づけると水の流れる自動式や、肘でノブを上げ下げして水を流す構造でなければなりません。
床や天井の構造も、清掃しやすいものかどうかなどで注意されます。
加えて、いつまでに工事完了の予定か、いつ営業を始めたいかなど、スケジュールを聞かれます。
- 保健所に申請書類を提出
施設を工事し完了する予定日の10日くらい前に、以下の書類を提出します。
必要な書類 | 必要な数 | |
---|---|---|
1 | 営業許可申請書 | 1通 |
2 | 施設の構造及び設備を示す図面 | 2通 |
3 | 食品衛生責任者の「資格」を証明するもの(食品衛生責任者手帳など) | ※見せるのみで可 |
4 | 水質検査成績書(水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合) | ※必要に応じ |
5 | 許可申請手数料 | ※保健所を設けている役所の定めによります |
提出先の保健所によっては、上記の書類に加え、必要なものが増えます。
例えば法人が飲食業許可を取得したい場合、法人番号が分からないときだけ「登記事項証明書」を添付すれば足りますが、渋谷区の場合、「登記事項証明書」を直接持参して見せなければなりません。
- 施設検査の打ち合わせ
申請の際、担当者と工事の進行状況の連絡方法や検査日等の相談を行います。
- 施設完成の確認検査
保健所の担当者と施設の現地で待ち合わせ、完成確認を受けます。営業許可を受ける人が必ず立ち会わなければなりません。
施設基準に合っていない場合は許可されません。不適格となった場合は改善した上で、改めて検査日を決めて再検査を受けます。
- 許可書の交付
施設基準に適合していると確認された場合、許可書が交付されます。交付までには数日かかります。
なお、営業そのものは、施設完成の確認検査をクリアしさえすれば、許可書が手元に届くことを待たずに開始しても問題ありません。
営業許可後に必要なこと
営業許可を受け実際に仕事を始めた後も、必要に応じて以下の書類を提出しなければなりません。
- 申請した事項から変更があった場合 = 変更届
例えば、営業している人の住所や氏名が変わったり、食品衛生責任者が変わったなどの場合は変更届を、変更のあった日から10日以内に提出する必要があります。
以下のとおり、変更内容によって添付する必要書類が異なります。
なお、営業許可書の添付も必要です。
変更内容 | 必要書類 | |
---|---|---|
個人の場合 | 結婚、離婚等による氏名の変更 | 戸籍抄本 |
営業者住所(住まい)の変更 | ー | |
法人の場合 | 商号の変更 | ー(変更届に記載する法人番号で確認できるため、書類不要。ただし、法人番号を記載しない場合は登記事項証明書(登記簿謄本)を添付) |
本社所在地の変更 | 同上 | |
代表者氏名の変更 | 同上 | |
個人・法人共通 | 食品衛生責任者の変更 | 食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳など) |
営業設備 | 施設の構造及び設備を示す図面 2通 | |
営業所の名称、屋号、その他記載事項の変更 | ー |
- 廃業や営業所を変更した場合 = 廃業届
残念ながら営業を終了した場合のほか、営業所を移転した場合、営業者が変わった場合、廃業届に営業許可書を添えて、保健所に10日以内に提出します。
営業所を移転した場合、営業者が変わった場合は、新たに営業許可が必要となります。
- 法令で特定の届け出が必要な場合
法令の定めにより届出が必要な場合は以下の書類です。
①食品衛生管理者選任(変更)届、②ふぐ取扱所認証申請書、③生食用食肉の取扱い開始報告書 など
ほかにもあり得ますので、営業開始前に保健所の担当者に説明し、必要書類を確認した方が良いでしょう。
- 営業を継続する場合
営業許可期限の満了後も引き続き営業したい場合、期間満了前に以下の書類を保健所に提出します。
許可期限満了の日の約1か月前には保健所に提出することが求められています。
必要書類 | |
---|---|
1 | 営業許可申請書 |
2 | 現に受けている営業許可書(施設の構造及び設備を示す図面が添付されたもの) |
3 | 許可申請手数料 |
4 | 1年以内に行った水質検査成績書(水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合) |
5 | 食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳など) |
まとめ

東京で飲食業を受ける場合の具体的な方法について、詳しく解説しました。
保健所とやり取りする中で、営業施設の構造や設置する設備、水回りに関することについては細かく指示されますが、むしろ衛生的な営業を行っていくためのアドバイスと捉え、チェックをしっかりパスし、安全で信頼性ある状態で営業をスタートしてください。
なお、飲食店を開始する際、消防署に「防火対象物使用開始届出書」の提出も、営業開始7日前までに必要となります。
うっかり忘れると営業開始できませんので、ご注意ください。
また、一定の年数を経過すると継続のための手続きも必要となります。
忘れず手続きを行わないと違法営業となってしまいますので、十分に注意してください。
とちもと行政書士事務所では、お客様のニーズに合わせ、打ち合わせや役所との調整のタイミングなど、臨機応変に対応しております。
飲食業許可についても、できる限りスピーディーに、お客様のお時間を可能な限り使わせないよう心掛けています。
お時間がないなどお困りごとの際は、当事務所にぜひご相談ください。