【NPO法人・定款】定款に必ず定めなければならないこと(必要的記載事項について)

NPO法人であっても、定款作成の際に必ず記載しなければならない事項が定められています。

これを必要的記載事項といい、18事項が定められています。これを定めない定款は無効です。

必要的記載事項のほか、定めなければ定款全体が無効になるというものではありませんが、定款で定めておかないとその効力が発生しない「相対的記載事項」と、必要に応じて任意に記載できる「任意的記載事項」があります。

今回は、NPO法人の定款において必ず定めなければならない必要的記載事項について解説します。

18の必要的記載事項

NPO法人の定款で定めなければならない必要的記載事項は以下の18事項です。いずれも組織の中核を定める事項であり、当然のことながら十分な検討を経て決めていかなければなりません。

1 名称
2 目的
3 行う「特定非営利活動の種類」及び当該特定非営利活動に係る「事業の種類」
4 主たる事務所及びその他の事務所の所在地
5 社員の資格の得喪に関する事項
6 役員に関する事項
7 会議に関する事項
8 資産に関する事項
9 会計に関する事項
10 事業年度
11 その他の事業を行う場合には、その種類その他当該その他の事業に関する事項
12 解散に関する事項
13 定款の変更に関する事項
14 公告の方法
15 役員の任期
16 定款変更のための議決方法
17 総会の招集方法
18 設立当初の役員

それぞれの留意点については以下のとおりです。

名称

定款上はどのような文字も使用できますが、一般的に読みにくい文字は避けた方が良いでしょう。

また、登記する必要がありますので、登記で使用できないような文字とならないよう、基本的には常用漢字やひらがな、カタカナの表記とします。

なお、法人の登記においては、日本の文字のほか、ローマ字、アラビア数字、一定の符号(ピリオドやハイフン、中点など)の使用も可能とされています。

NPO法人であることを明らかにする「特定非営利活動法人」の文言については、記載してもしなくても良いことになっていますが、NPO法人であることを外部に示す重要な言葉であり、かつNPO法人以外は使用できない名称でもあるため、基本的には付けた方が良いでしょう。

なお、他の法律などで独占的に使用されている名称は使用できないことに留意してください。

事務所

定款には主たる事務所(いわゆる本店)を記載する必要がありますが、区市町村単位まで記載すれば良い、とされています。

もちろん、番地まで正確に記載しても構いませんが、その場合、同じ区市町村内で住所を変更したら定款変更しなければならなくなります。

目的

NPO法人という性質上、公益の増進に寄与する活動を行うことが求められます。このため、そのような活動を行うことが分かる目的を定める必要があります。

目的とした事項については、設立趣旨書の内容に具体化することになりますし、設立総会などにおいても目的を説明する必要もあります。
また、そもそもとして、法人は定款などで定めた目的の範囲内で権利を有し義務を負うことになりますので、設立するNPO法人の活動内容が明確に分かる目的とすることが望ましいです。

加えて、NPO法人は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として事業を行ってはならない、とされており、特定の個人・団体や、NPO法人の構成員の利益を図るような目的を定めることはできません。

これらをまとめると、広い範囲の受益者に対し、法で定める20分野の特定非営利活動のいずれか(全部でも可)を行い、社会に利益をもたらすことを目的とするような書きぶりが良いでしょう。

特定非営利活動の種類

あらかじめ法定された20の分野から、今回設立するNPO法人の扱う分野を選択して記載します。具体的には、以下の分野から選択します。

なお、いくつ選択しても構いません。

① 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
② 社会教育の推進を図る活動
③ まちづくりの推進を図る活動
④ 観光の振興を図る活動
⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
⑦ 環境の保全を図る活動
⑧ 災害救援活動
⑨ 地域安全活動
⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
⑪ 国際協力の活動
⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
⑬ 子どもの健全育成を図る活動
⑭ 情報化社会の発展を図る活動
⑮ 科学技術の振興を図る活動
⑯ 経済活動の活性化を図る活動
⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
⑱ 消費者の保護を図る活動
⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

事業

NPO法人は、「特定非営利活動に係る事業」と「その他の事業」を行うことが許容されています。

ただし、「特定非営利活動に係る事業」を主な活動としなければならず、あくまで「その他の事業」は附属的となる必要があります。

なお、事業の数に制限はありません。設立後すぐに始められる事業でなく将来的に行う予定の事業を記載しても構いません。
(所轄庁である都道府県等によっては、将来的に開始する事業であっても、その開始の見通しが立っているものであるべき、としているところもあります)

社員の資格の得喪に関する事項

NPO法人は、社員を置かなけれなならず、どのような社員を置くのかを定款に記載しなければなりません。その社員となるための要件や社員の資格を失うケースについてが必要的記載事項となっています。

社員の種類や名称については特段規定されていませんので自由に設定できます。複数の社員を設定した場合、いずれが特定非営利活動法人法で定めなければならないとされている「社員」なのかを特定して明記する必要があります。

例:この法人の会員は、次の2種とし、正会員をもって特定非営利活動法人法(以下「法」という。)上の社員とする。

(1)正会員 この法人の目的に賛同して入会し、この法人の活動及び事業を推進する個人

(2)賛助会員 この法人の目的に賛同して入会し、この法人の活動を賛助する個人または団体

役員に関する事項

NPO法人は、役員として理事を3人以上、監事を1人以上置くことを義務付けられています。

このため、定款にも役員の定数を記載しておかなければなりません。

また、NPO法人は原則として理事それぞれが法人を代表するとされていますが、一般的には、理事の中で「会長」や「理事長」といった代表者を決めるケースが通常です。

会長などの代表者を決めるためには、定款で理事それぞれの代表権を制限することが必要です。

このほか、役員の選任、任期、解任の方法なども定款で定めます。

会議に関する事項

NPO法人は、法人の最高意思決定機関として、総会を設定しておく必要があります。

総会には、定期的に開催する通常総会と、必要なときに随時開催する臨時総会の2種類があり、総会の構成や表決の方法などは定款で定めます。

加えて、機動的にNPOを運営するために理事会を設置したい場合も、定款で定めておかなければなりません。

理事会をどのように設計するかはNPO法人の意向にゆだねられますが、総会と理事会のどちらにどの権能を持たせるのかをしっかり決めておくことが求められます。

資産及び会計に関する事項

NPO法人の資産の構成についても、定款で定めておくことになります。

NPO法人は、特定非営利活動に関する事業と、それ以外の事業を行うことができますが、それらの事業ごとに会計処理を分けることが必要で、資産もそれぞれに分けて管理しなければなりません。

そして、事業年度の設定や、決算書類などについても、定款で規定します。

定款の変更、解散及び合併について

NPO法人の根幹である定款を変更することや、NPO法人の活動を終結させる解散・合併に関することについても、定款で定めておく必要があります。

定款変更や解散などの事由については、NPO法人法に細かく規定されていますが、それら以外の規定を加えたい場合も、定款で明記します。

なお、解散した後も法人そのものは「清算法人」という形で存続し、残った財産(残余財産と言います)を分配して活動を停止します(活動を停止することを結了といいます。)。

NPO法人の場合、解散後の財産を構成員に分配することはできません。
このため、予め定款で残余財産をどう処分するのかを決めておくことができます。

公告の方法

NPO法人は非営利活動を行う組織として税制上の優遇を受けられるなど、恵まれた環境を享受できます。

その分、地域住民を始めとする一般の方に適切な情報提供を行う姿勢が求められます。

そして、第三者の権利を保護するため、広く「公告」という形で情報を公開しなければなりません。

公告の方法としては、官報や日刊新聞への掲載も可能ですが、法人のHPや内閣府のポータルサイトへの掲載でも良いとされています。

なるべく自分たちが行いやすい形で公告すれば良く、その方法を定款に記載しておきます。

まとめ

今回は、NPO法人を作る際に必要となる定款に記載が必要な事項について解説しました。

NPO法人の設立については、株式会社など通常の法人に比べて行政に対する手続きが非常に多く、また煩雑な手順を踏むことになります。

とちもと行政書士事務所では、NPO法人や社団・財団法人などの非営利法人の設立サポートに力を入れています。

お困りごとがありましたら、気軽にお問い合わせください。

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