【民泊業】を始める③ ~届出等で留意すべき点の補足~

民泊業を始める場合、住宅民泊事業法に基づく都道府県等への届出を行うことが最も簡便です。その場合でも、事業者となるための要件や提出すべき書類が明確に定められています。

住宅民泊事業法に定める届出書類については、以下で解説してますが、今回はその補足事項について説明します。

欠格事由について

届出を行う際に提出する書類に「欠格事由に該当しないことを誓約する書面」というものがあります。

ここでいう欠格事由とは、以下の事項のことです。

欠格事由
心身の故障により住宅宿泊事業を的確に遂行することができない者として国土交通省令・厚生労働省令で定めるもの ※
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から3年を経過しない者
禁錮以上の刑に処され、又はこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に処され、その執行を終わり、又は執行をうけることがなくなった日から起算して3年を経過しない者
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という)
営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が[1]から[5]のいずれかに該当するもの
【法人】役員のうちに[1]から[5]までのいずれかに該当する者があるもの
暴力団員等がその事業活動を支配する者

※ 国土交通省令・厚生労働省令で定めるものとは、精神の機能の障害により住宅宿泊事業を的確に遂行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない方のことを指しています。

これらの欠格事由に該当しないことを「誓約書」で申告することになります。
なお、誓約書はフォーマットがあります。

住宅宿泊管理業務の委託

住宅宿泊事業法に基づく事業者(民泊を始める方本人)が次のいずれかに該当する場合は、宿泊者の衛生や安全の確保などの住宅宿泊管理業務を、国の認定する「住宅宿泊管理業者」に委託する必要があります。

1.届出住宅の居室の数が、5を超える場合
2.届出住宅に人を宿泊させる間、不在となる場合

ここでいう「2.届出住宅に人を宿泊させる間、不在となる場合」は、

・日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除く

・住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなくてもその適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認められる場合として以下のいずれをも満たす場合は除く

 ⇒ ①住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一の建築物もしくは敷地内にあるとき又は隣接しているとき
(住宅宿泊事業者が当該届出住宅から発生する騒音その他の事象による生活環境の悪化を認識することができないことが明らかであるときを除く)

 ⇒  ②届出住宅の居室であって、それに係る住宅宿泊管理業務を住宅宿泊事業者が自ら行うものの数の合計が5以下であるとき

とされています。

難しい説明となっていますが、民泊を行いたいと考えている部屋がある建物と同居している人が事業者であり、5部屋以下である場合、住宅宿泊管理業者に委託しなくて良い、ということになります。

なお、住宅宿泊管理業務の委託は、住宅宿泊管理業務の全部を契約により委託する必要があり、一部だけ委託する、ということはできません(全部の業務を委託しなければなりません)

補足ですが、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一の共同住宅内にある場合や同一の敷地内にある場合等であっても、敷地が広範であるためそれぞれの住戸の距離が著しく離れている場合など、届出住宅で発生する騒音等を認識できないことが明らかである場合には、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する必要があります。

簡単にいえば、宿泊者の安全確保や近隣住民とのトラブル防止などの観点で、何かあった際にすぐに駆け付けられるような場所にいなければならない、そうでなければ管理業務を管理者に委託しなければならない、ということです。

「住宅の図面」について

提出することとされている「住宅の図面」には、以下の事項の記載が必ず必要となります。
 (1)台所、浴室、便所及び洗面設備の位置
 (2)住宅の間取り及び出入口
 (3)各階の別
 (4)居室、宿泊室、宿泊者の使用に供される部分(宿泊室を除く)のそれぞれの床面積
 (5)非常用照明器具の位置、その他安全のための措置内容等、安全の確保のための措置の実施内容について明示

「入居者募集などを証明する書類」について

民泊を行いたい住宅については、住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当するか、「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する必要があります。

「入居者の募集が行われていることを証する書類」とは、当該募集の広告紙面の写し、賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写し、募集広告の写し、募集の写真その他の入居者の募集が行われていることを証明する書類をいいます。
なお、賃貸(入居者)の募集をしていることについては、都道府県等が必要に応じて報告徴収により確認することがあります。

「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されていることを証する書類」とは、届出住宅周辺における商店で日用品を購入した際のレシートや届出住宅と自宅の間の公共交通機関の往復の領収書の写し、高速道路の領収書の写しその他の随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されていることを証明する書類をいいます。

賃貸借や転貸借されている住宅を民泊で活用したい場合について

賃貸借や転貸借されている住宅を民泊で活用したい場合、その賃貸人や転貸人が承諾したことを証する書類の提出が必要です。

この書面には、住宅宿泊事業を行うことが可能かどうかについて明記されている必要があります。
賃貸借契約書にその旨が明記されていない場合は、別途、賃貸人等が住宅宿泊事業を行うことを承諾したことを証する書類が必要となります。

区分所有の建物の場合の添付書類について

区分所有の建物の場合には、管理組合等の規約の写しが必要で、規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、「管理組合に禁止する意思がないことを証する書類」が必要です。

「管理組合に禁止する意思がないことを証する書類」は、住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書、または総会及び理事会の議事録等を指します。

消防法令適合通知書

住宅宿泊事業を行うにあたっては、消防法令に適合している必要があります。

消防法令適合状況の確認の手続(消防法令適合通知書の添付など)については、届出住宅を管轄する消防署ごとに要件を定めていますので、それぞれ所轄する消防署に問い合わせて確認します。

併せて、消防法令において必要となる措置について、消防署等に確認します。

まとめ

住宅宿泊事業法に定める提出書類等に関する補足事項について説明しました。

今回触れた「住宅宿泊管理業者」については、別で説明したいと思います。

とちもと行政書士事務所では、お客様のご要望を受け、速やかに申請手続きを行います。ぜひご相談ください。

関連記事

  1. 【民泊業】を始める④ ~消防法上の注意点~
  2. 【旅館業】を営む際の物件に対する制限について④ ~敷地内通路~
  3. 【民泊業】を始める⑤ ~対象となる物件の要件~
  4. 【民泊業】の届出制度について(手続き総論)
  5. 【旅館業】を営む際の物件に対する制限について③ ~接道義務~
  6. 【民泊業】を始める② ~新しく民泊業を営む方法について~
PAGE TOP