【建設業】の許可制度について(手続き総論)
ある程度の規模の工事を仕事として営もうとする場合、行政庁(役所)から建設業の許可を受ける必要があります。
建設業許可の具体的な内容については、建設業法によって定めされています。
建設業法は
①手抜き工事などの不良工事を防止し、適正な施行の確保を実現して、発注者の保護を図ること
②社会の基盤となる施設の整備を担う重要な産業である建設業の発展の促進
を目的としています。
そしてこの目的を達成する手段として、
①建設業を営む者の資質の向上 = 建設業の許可制度、技術検定制度の構築
②建設業の請負契約の適正化 = 請負契約の原則の明示、契約書の記載事項の法定など請負人や下請負人の保護
このように建設業法は、単に建設業者に対して規制を加えるだけでなく、建設業者の健全な育成を通じ、建設業界の発展を目指すものです。
建設業とは
建設業法でいう建設業とは、元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。
そして請負とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約束する契約をいいます。
これに該当しない行為(雇用、委任、建売住宅の売買、委託契約や研究等のための調査、物品の販売など)は請負には該当しません。
なお、単なる物品の販売等であったとしても、発注者に対して建設工事の完成を請け負うような契約となる場合には、建設業とされる場合があります。
建設工事の種類
建設業法上の建設工事は以下の29種類です。
土木一式工事 | 管工事 | 塗装工事 | 建具工事 |
建築一式工事 | タイル・れんが・ブロック工事 | 防水工事 | 水道施設工事 |
大工工事 | 鋼構造物工事 | 内装仕上工事 | 消防施設工事 |
左官工事 | 鉄筋工事 | 機械器具設置工事 | 清掃施設工事 |
とび・土工・コンクリート工事 | ほ装工事 | 熱絶縁工事 | 解体工事 |
石工事 | しゅんせつ工事 | 電気通信工事 | |
屋根工事 | 板金工事 | 造園工事 | |
電気工事 | ガラス工事 | さく井工事 |
このように、ひと口に建設業の工事といっても、思ったより幅広い工事が対象となることが分かります。
建設業を営むには、建設業法に定める「建設業者」として、建設工事を行うことになります。そして建設業者は、建設業法第3条第1項の規定により、行政から許可を受けなければなりません。
(以下で述べますが、軽微な建設工事のみ請け負う場合は許可不要です)
なお、建設業と切っても切れないのが、行政の発注する公共工事です。
公共工事については、工事を発注する国、地方自治体などからあらかじめ入札資格を取得しておき、工事の発注(入札募集)ごとに入札参加し、原則として最も安い価格を提示した業者が落札する仕組みです。
許可が不要な工事(軽微な工事)について
軽微な工事として定められた以下以外は許可を受ける必要があります。
工事の種類 | 条件 |
---|---|
建築一式工事(※1)以外の建設工事 | 1件の請負代金が500万円未満の工事(消費税込) |
建築一式工事で右のいずれかに該当するもの | A:1件の請負代金が1,500万円未満の工事(消費税込) B:請負代金の額にかかわらず、木造住宅(※2)で延べ面積が150㎡未満の工事 |
※1 建設一式工事とは、原則として元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整の下に建築物を建設する工事のことを指します。
※2 木造住宅とは、主要構造部が木造で、延べ面積の1/2以上を居住の用に供するものです。
少し複雑に見えますが簡単に言えば、総合的な建築工事を除き、500万円以上の請負代金の工事には建設業許可を受ける必要があるということです。
なお、請負代金の考え方ですが、以下の3つに留意してください。
①一つの工事を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額となります(正当な理由に基づく場合を除きます)
②注文者が材料を提供する場合は、市場価格又は市場価格及び運送費を当該請負契約の請負代金の額に加えたものが請負代金の額となります。
③建設業法の適用は日本国内であるため、外国での工事等には適用されません。
許可を出す行政庁(役所)
行政庁の許可は、要件に応じ、以下のとおり国土交通大臣または都道府県知事から受けます。
要件 | 許可を出す行政庁(許可権者) |
---|---|
2以上の都道府県に営業所(※)を設けて営業しようとする場合 | 国土交通大臣 (国土交通省の機関に申請) |
1つの都道府県のみに営業所を設けて営業しようとする場合 | 都道府県知事 (都道府県の窓口に申請) |
※営業所とは、「本店」、「支店」、「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」のことを指しています。
同じ県内で複数の営業所を持ったとしても、その営業所の所在する都道府県知事に申請すればOKです。
営業所の要件
営業所についても、要件が定められています。
営業所とは、請負契約の締結に関する実体的な行為(見積・入札・契約等)を行う事務所であって、少なくとも以下の要件を備えているものをいいます。
単なる登記上の本店に過ぎないものや、建設業と無関係な支店、請求や入金等の事務作業のみを行う事務所・事務連絡所、工事作業員の詰める工事現場事務所や作業所等は、営業所には該当しません。
他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等、建設業に係る営業に実質的に関与する事務所であれば、営業所に該当します。
以下の全て満たす必要あり | 営業所の要件 |
---|---|
ア | 外部から来客を迎え入れ、請負契約の見積り、入札、契約締結等の実体的な業務を行っていること |
イ | ・電話(※)、机、各種事務台帳等を備え、契約の締結等ができるスペースを有し、他法人又は他の個人事業主の事務室等とは間仕切り等で明確に区分されていること (※)業務用の携帯電話でも可です ・同一法人で本社と営業所が同一フロアである場合は、仕切り等は必要ないが、明らかに他の営業所と分かるよう看板等を掲示し、営業形態も別とすること ・個人の住宅にある場合には居住部分と適切に区別されているなど独立性が保たれていること |
ウ | 常勤役員等(経営業務の管理責任者)(以下、「常勤役員等(経管)」といいます。)又は建設業法施行令第3条の使用人(支店等において上記アに関する権限を付与された者)(以下、「令3条の使用人」といいます。)が常勤していること |
エ | 専任技術者が常勤していること |
オ | 営業用事務所としての使用権原を有していること(自己所有の建物か、賃貸借契約等を結んでいること)。住居専用契約は、原則として認められません。 |
カ | 看板、標識等で、外部から建設業の営業所であることが分かる表示があること |
上記の営業所要件ウで触れた経管や、エで触れた専任技術者については、別のページでご説明します。
許可の区分(一般建設業と特定建設業)
許可には以下の2種類があり、営もうとする工事の規模によって、取得する許可が変わってきます。
要件 | 許可の種類 |
---|---|
1件の元請工事につき、その工事の全部又は一部を、下請人に4,500万円以上で施工させる場合(建設一式工事の場合は7,000万円以上) | 特定建設業許可 |
上記の特定建設業以外の建設業 | 一般建設業許可 |
少し分かりにくいので補足しますと、自分が元請として受注した工事について、下請に工事を発注した場合、その下請に出した金額(請負金額)の合計が4,500万円以上かどうか(建設一式工事の場合は7,000万円以上)で、4,500万円以上の場合は、特定建設業の許可を取得しなければならない、ということです。
それ以外の場合は、一般建設業許可で足ります。
2種類に分かれていると簡単に説明しましたが、特定建設業許可は一般建設業許可に比べ、許可の要件が厳しいため、申請にかかる手間が随分と違ってきます。
なお、いずれの許可も、許可の日から5年目を経過する日の前日で満了してしまいます。継続して建設業を営む場合、更新の申請を行う必要があります。
許可の具体的な要件
建設業の許可要件は以下のとおりです。
- 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すること
- 専任技術者を置くこと
- 財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと
- 請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
- 欠格要件に該当しないこと
- 社会保険への加入すること
詳しくは別の記事で解説しています。
まとめ
建設業を営む場合に必要な手続きについて解説しました。許可の要件はかなり複雑ですので、別のページで説明したいと思います。
とちもと行政書士事務所では、お客様のご要望を受け、速やかに許認可手続きを行います。ぜひご相談ください。