【旅館業】を営む際の物件に対する制限について③ ~接道義務~
旅館業を営む場合、どのような物件で開業するかが非常に大きな課題となります。
物件が立地する地域には、都市計画法上の用途地域の制限や、その物件が旅館等を営むことができるかについての建築基準法上の制限を確認する必要があります。
参考:用途地域の制限
参考:建築基準法上の建築確認について
このうち、建築基準法の制限については、物件が接している道路に関する制限もあり(これを接道義務といいます)、これは案外見落としがちな落とし穴といえます。
今回は、旅館業を営むに際し課題となる道路に関する制限について解説します。
なお、旅館業の許認可申請手続きについては、以下の記事で解説しています。
接道義務とは
接道義務とは、建築基準法で定められた「道路」に敷地が2m以上接していなければならない、というルールです。
公道か私道であるかは問わず、「道路」に接している必要があります。
建物の敷地部分と道路が2m以上接しているということですので、一般的な敷地を有する建物であれば問題なくクリアできる条件ではありますが、問題は「道路」と認められないような道(私有地の通路など)を通って敷地に到着するような建物です。
この場合、接道義務を満たしていません。
なぜこのような建物を建てることができているのかというと、接道義務を始めとする規制を設けている建築基準法の施行より前に建てられている建物が多いためです。
建築基準法で接道義務が定められたのは1950年からです。
それより前に建てられた建物については、建て直す時に建築基準法を満たせばよいとされたため、現在建っている建物で接道義務を満たしていない建物も存在するということです。
そしてその場合に問題となるのは、既存の住宅を活用して、または既存の敷地に新しく物件を作った上で旅館業や住宅宿泊事業を開始する場合です。
なお、接道義務は「都市計画区域」または「準都市計画区域内」の建築物に関する規制です。
都市部で旅館業等を行う場合にこの規制が問題となりますが、地方であれば接道義務を考慮しなくて良い場合があります。
道路について
接道義務の基準となる道路とは、どのようなものでしょうか。
建築基準法上、道路とは、
①国道や都道府県道、市町村道などの幅員4m以上の公道
②認可を受けて築造した幅員4m以上の道路
③土地の所有者が築造する幅員4m以上の道路
④建築基準法が施行される前から存在している幅員4m未満の道(いわゆる「2項道路」)
などのことを指します。
簡単にいえば、
A:4m以上の公道・私道
B:建築基準法の施行(1950年)以前から道路として成立している幅員4m未満の道
と考えれば良いでしょう。
そして、東京23区では、それぞれの区内の道路について、AやBなのかそうでないか、ネットで検索することができるようになっています。
例えば渋谷区では、以下のサイトにより、その場所の道路がABその他かどうかを分かるようにしています。
例:渋谷区地図情報システム
https://www2.wagmap.jp/shibuya-sp
まずは、確認したい道が道路かどうかを確認することで、接道義務を満たしているのか確認しましょう。
都内の接道義務について
旅館業を営業する場合、敷地に隣接しているのが道路であれば後は2mを満たすかどうかを確認するということですが、東京都内の場合、さらに東京都の条例(東京都建築安全条例)により、旅館業を営む施設を「特殊建築物」と位置づけ、その基準が重くされており、500㎡以下の敷地の接道義務は4m以上とされています。
なお、住宅宿泊事業法に基づく、いわゆる民泊の場合、東京都の条例による4m以上の接道義務の対象外となります。
つまり、原則通り、2m以上の接道義務を満たすことで問題ありません。
まとめ
旅館業や住宅宿泊事業法に基づく民泊と接道義務の関係について、解説しました。
都内における旅館業としては、接道義務4m以上が基準となっていることを意識する必要があります。
この基準を満たす物件であるかどうかを最初に確認した方が良いでしょう。
とちもと行政書士事務所では、お客様のご要望を受け、速やかに許認可手続きを行います。ぜひご相談ください。