【旅館業】を営む際の物件に対する制限について② ~建築確認~

旅館業を営む場合、どのような物件で開業するかが非常に大きな課題となります。

物件が立地する地域には、都市計画法上の用途地域の制限が存在している可能性があります。また、その物件が旅館等を営むことができるかについて、建築基準法上の制限もあります。

今回は、旅館業を営むに際し課題となる建築基準法上の制限について解説します。

なお、旅館業の許認可申請手続きについては、以下の記事で解説しています。

物件に関する制限について

戸建ての住宅で旅館等の事業を始めようとする場合、最初に以下の2つを確認する必要があります。

①対象施設の用途地域
②対象施設の建築確認

今回解説する②対象施設の建築確認についてですが、具体的には、「建築確認検査済証」が必要となります。

建築確認検査済証とは、建築確認の検査が必要な建物に対し、その検査をしたことを証明する公的な書類です。

建築確認とは

建築確認は、建築主が申請書を建築主事若しくは行政(国土交通省や都道府県)があらかじめ指定している民間の「指定確認検査機関」に提出して、法に適合しているかどうかの審査を受けるものです

建物の設計は建築士に依頼しますが、通常、建築確認の申請手続もその建築士に委任し、建築士が代行しています。

建築士は建築物の設計に当たっては、建築基準法を始め各種の関係法令に適合するようにしなければなりませんが、これに加え、行政の職員である建築主事等がさらに審査するという体制を採っており、建築基準法上、建物に対して二重のチェックを行うことで、危険な建築物の建設を排除する仕組みとなっています。

建築主事等が法に適合していることを確認した場合は「建築確認済証」が交付されます。この確認済証の交付を受けた後、ようやくその建築物の工事を着工することができます。

さらに工事の完了後、建築主は完了検査申請を建築主事等に提出して完了検査を受け、問題ない旨の認証を受けることで「建築確認検査済証」が発行され、その建築物を使用することができます。

参考:建築確認が必要な建築物について

建築物に対する建築確認について、建築基準法等の法令で要件が決まっています。
具体的には、都市計画区域内か区域外かにより、確認が必要な基準が定められています。

〇都市計画区域内
・新築の建物、または増築改築部の面積の合計が10m²を超える建物
 (ただし、防火・準防火地域では、10m²以下であっても建築確認を申請する必要があります)
〇都市計画区域外
・100m²を超える、特殊建築物(学校・病院・工場・倉庫・店舗・車庫・集会場等)
木造の建築物で「3階建て以上」または「延べ床面積500m²超」または「高さ13m超、又は軒高9mを超える」建物
木造以外の建築物で「2階建て以上」または「延べ床面積200m²以上」の建物

上記は一般的な基準となっていますが、各自治体が個別に定める条例により、建築確認を受ける基準を独自に設けている場合もあり、それぞれの自治体に確認する必要があります。

なお、都内23区では、延べ面積1万平方メートルを越える建築物は東京都が、それを下回る建築物は23区が建築確認を行うことになっています。
(延べ面積1万平方メートルを越える建築物に関する建築確認の申請は、東京都に直接行うことになっています)

旅館業と建築確認の関係

旅館業を営みたい場合、一番重要となるのはどの物件=建築物で営業するかです。

旅館業を行う建築物の建築基準法の用途については「ホテル、旅館」という区分になります。
(用途制限については、以下を参照してください)

既存の建築物(例えばマンション等の共同住宅、一戸建て住宅等)を活用する場合、「ホテル、旅館」の部分の面積が 200 ㎡を超える場合には、用途変更に伴う建築確認申請の手続きが必要となります。

なお、既存の建築物の用途が「ホテル又は旅館」である場合は、用途変更に伴う建築確認申請の手続きは必要ありません。

建築確認申請(用途変更)の手続きが不要な場合でも、当該建築物は建築基準法に適合していなければなりません。

通常の行政手続きでは、当該建築物が建築基準法に基づく検査を受けていることを確認できるよう、申請書の添付資料として、「建築確認検査済証」や、そもそも建築確認が不要であることを証明する「建築確認不要証明証」の写しの提出を求められます。

「建築確認不要証明証」は、その建築物が所在する自治体の建築主事に申請し発行してもらいます。

まとめ

旅館業と建築確認の関係について、解説しました。

旅館業として営業したい建物が200㎡を超えるかどうかは極めて重要な基準となっています。

実務的には、前から「ホテル、旅館」の検査済証を得ている建物であれば特に問題ありませんが、200㎡を超える建物で新たに「ホテル、旅館」を始める場合、適合した建築物であるかについて改めて用途変更に伴う建築確認申請の手続きを行わなければならず、場合によってはその検査を突破できない恐れもあります。

まずは物件の面積を確認し、改めての建築確認が必要かどうかを確認しましょう。

とちもと行政書士事務所では、お客様のご要望を受け、速やかに許認可手続きを行います。ぜひご相談ください。

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