【旅館業】を営む際の物件に対する制限について① ~用途地域~

旅館業を営む場合、どのような物件で開業するかが非常に大きな課題となります。

物件が立地する地域には、都市計画法上の用途地域の制限が存在している可能性があります。また、その物件が旅館等を営むことができるかについて、建築基準法上の制限もあります。

今回は、旅館業を営むに際し課題となる用途地域について解説します。

なお、旅館業の許認可申請手続きについては、以下の記事で解説しています。

物件に関する制限について

戸建ての住宅で旅館等の事業を始めようとする場合、最初に以下の2つを確認する必要があります。

①対象施設の用途地域
②対象施設の建築確認

①対象施設の用途地域についてですが、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、13種類あります。
主に、住居系、商業系、工業系に分かれており、住民生活などに影響がない、調和のとれた都市づくりの観点で、行政により指定されています。

用途地域が指定されると、それぞれの目的に応じて、建てられる建物の種類が決められます。

「ホテル、旅館」に対する制限

「ホテル、旅館」については、上記のとおり、第一種住居地域(3000㎡以下)、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域に限り、建築して良いことになっています。

なお、都市計画法における市街化調整区域、非線引き区域や都市計画区域外については、

市街化調整区域=原則として営業不可

非線引き区域や都市計画区域外=営業可能

となっています。ただし、自治体によっては独自の制限を定めている場合があるため、旅館業を営みたい物件の所在地を管轄する自治体に必ず事前確認すべきです。

用途地域かどうかの調べ方

都道府県では、用途地域の制限対象かどうかを調べることができる検索システムを運用しているケースが多く、例えば東京都では、所管局の都市整備局において、「都市計画情報等インターネット提供サービス」という名称の検索システムで、該当地域がどの用途地域なのかを調べることができます。

https://www2.wagmap.jp/tokyo_tokeizu/Portal

インターネットでの検索サービスがない自治体の場合でも、それぞれの役所に「建築課」(名称は様々)が設けられており、そこで確認することも可能です。

なお、物件が複数の用途地域にまたがっている場合、最も大きな面積のある用途地域が優先されます。

例えば、第一種低層住宅専用地域に80㎡・近隣商業地域に20㎡の合計で100㎡の建物の場合、第一種低層住宅専用地域に該当してしまうため、旅館業の許可が取得できない、ということになります。

まとめ

今回は、旅館業を営む際に関門となる用途地域について解説しました。

用途地域の制限対象となってしまっていると、旅館業の営業は不可能です。どうしてもその場所で開業したい場合、旅館業法の対象としての「ホテル、旅館」ではなく、住宅宿泊事業法に定める「住宅」(いわゆる民泊の形式)として開業する方法もあります。

ただしその場合、営業日数の制限(営業できるのは180日まで)もあり、フルタイムでの宿泊サービスの提供は難しくなります。

いずれにしても、まずは用途地域かどうかをしっかり確認し、万が一の誤りで開業できないという事態に陥らないようにしましょう。

別の記事で、旅館業を営む際のもう一つの課題となる対象施設の建築確認について解説します。

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