【一般社団法人Q&A】基金とは何か

基金とは、一般法人法第131条によれば、

一般社団法人(一般社団法人の成立前にあっては、設立時社員。次条から第百三十四条まで(第百三十三条第一項第一号を除く。)及び第百三十六条第一号において同じ。)は、基金(この款の規定により一般社団法人に拠出された金銭その他の財産であって、当該一般社団法人が拠出者に対してこの法律及び当該一般社団法人と当該拠出者との間の合意の定めるところに従い返還義務(金銭以外の財産については、拠出時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務)を負うものをいう。以下同じ。)を引き受ける者の募集をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定款で定めなければならない。
 基金の拠出者の権利に関する規定
 基金の返還の手続

と定められています。

基金について、よく聞かれる質問をQ&Aにまとめました。

Q 基金について具体的に教えてください。

A
基金の定義は、一般法人法第131条に、「この款の規定により一般社団法人に拠出された金銭その他の財産であって、当該一般社団法人が拠出者に対してこの法律及び当該一般社団法人と当該拠出者との間の合意の定めるところに従い返還義務を負うものをいう。」とされており、端的に言えば、返還義務がある資金のことを指します。

基金を採用する場合は定款で、①基金の拠出者の権利に関する規定、②基金の返還の手続、を定める必要がありますが、そもそも基金の仕組みを取り入れるかは法人の自由です。

また、基金として集めたお金の使い方も法人の自由です。もちろん返還する義務はありますが、法人の円滑な運営のため、基金を設けることを選択しても良いでしょう。

Q 基金はどのように募集するのでしょうか?

A
基金を募集するには、その都度、①募集に係る基金の総額、②金銭以外の財産を拠出の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及びその価額、③基金の拠出に係る金銭の払込み又は②の財産の給付の期日又はその期間、を決定する必要があります。

この決定を行う機関ですが、定款で定めていれば、理事会で決定しても、社員総会で決定しても構いません。

なお、一般社団法人の成立前は、設立時社員全員の同意によって募集事項を決定します。

※参考条文
第百三十二条 一般社団法人は、前条の募集をしようとするときは、その都度、次に掲げる事項(以下この款において「募集事項」という。)を定めなければならない。
一 募集に係る基金の総額
二 金銭以外の財産を拠出の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及びその価額
三 基金の拠出に係る金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
2 設立時社員は、募集事項を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。

Q 基金の申込み手続きはどのようにすれば良いでしょうか?

A
基金の申込みについては、基金を申し込もうとする者に対し、①一般社団法人の名称、②募集事項、③金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所、などを通知します。

それを受けて、基金を引き受ける者は、①申込みをする者の氏名又は名称及び住所、②引き受けようとする基金の額、を記載した書類を法人に提出することで成立します。

なお、申込者は自身の希望額で基金を引き受けるわけではなく、法人は、申込者の中から基金の割当てを受ける者を定めることができます。
つまり、例えば申込者が100万円の引き受けを希望したとしても、法人の判断で50万円の引き受けとすることも可能、ということです。

※参考条文
第百三十三条 一般社団法人は、第百三十一条の募集に応じて基金の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 一般社団法人の名称
二 募集事項
三 金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 第百三十一条の募集に応じて基金の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を一般社団法人に交付しなければならない。
一 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
二 引き受けようとする基金の額

Q 申込者はどのように基金に拠出するのでしょうか?

A
申込者は、募集事項として定められた期限内に、金銭の払込みまたは現物財産の拠出を行うこととされています。

現物財産については、原則として、裁判所に申し立て検査役を選任しなければなりません。
検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を裁判所に提供して報告をしなければならない、とされています。

なお、一定の要件を満たせば検査役の選任は不要となります。

Q 基金の返還はどのようにすれば良いでしょうか?

A
基金の返還は、定時社員総会の決議によって行わなければなりません。

一般法人法で定められており、理事会や臨時社員総会など定時社員総会以外の決議で決めることができない仕組みとなっています。

返還の額については制限が設けられており、前事業年度末の貸借対照表上の純資産額が基金の総額を超える場合においては、当該事業年度の次の事業年度に関する定時社員総会の日の前日までの間に限り、当該超過額を返還の総額の限度として、基金の返還をすることができます。

この決まりを守らず返還限度額を超えて返還してしまった場合には、この返還の職務を行った業務執行者は、法人に対して連帯して返還額を弁済する責任を負わなければなりません。

業務執行者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の責任を負わない、ともされています。
また、総社員の同意がある場合に限って、業務執行者の弁済責任が免除されます。

なお、一般社団法人の債権者は、返還を受けた者に対し、当該返還の額を当該一般社団法人に対して返還することを請求することができます。

参考条文:
第百四十一条 基金の返還は、定時社員総会の決議によって行わなければならない。
2 一般社団法人は、ある事業年度に係る貸借対照表上の純資産額が次に掲げる金額の合計額を超える場合においては、当該事業年度の次の事業年度に関する定時社員総会の日の前日までの間に限り、当該超過額を返還の総額の限度として基金の返還をすることができる。
一 基金(第百四十四条第一項の代替基金を含む。)の総額
二 法務省令で定めるところにより資産につき時価を基準として評価を行っている場合において、その時価の総額がその取得価額の総額を超えるときは、時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額
3 前項の規定に違反して一般社団法人が基金の返還をした場合には、当該返還を受けた者及び当該返還に関する職務を行った業務執行者(業務執行理事その他当該業務執行理事の行う業務の執行に職務上関与した者をいう。次項及び第五項において同じ。)は、当該一般社団法人に対し、連帯して、違法に返還された額を弁済する責任を負う。
4 前項の規定にかかわらず、業務執行者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の責任を負わない。
5 第三項の業務執行者の責任は、免除することができない。ただし、第二項の超過額を限度として当該責任を免除することについて総社員の同意がある場合は、この限りでない。
6 第二項の規定に違反して基金の返還がされた場合においては、一般社団法人の債権者は、当該返還を受けた者に対し、当該返還の額を当該一般社団法人に対して返還することを請求することができる。

Q 基金を返還して基金そのものを無くしても良いですか?

A
一般社団法人が基金を返還する場合、返還額に相当する金額を「代替基金」として計上しなければなりません。
定款で定めている基金を0円にして無くすることができない、ということです。

参考条文:
第百四十四条 基金の返還をする場合には、返還をする基金に相当する金額を代替基金として計上しなければならない。
2 前項の代替基金は、取り崩すことができない。
3 合併により消滅する一般社団法人が代替基金を計上している場合において、合併後存続する一般社団法人又は合併により設立する一般社団法人が当該合併に際して代替基金として計上すべき額については、法務省令で定める。

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