【公益法人】どうすれば公益法人になることができるか

公益目的事業を行うことを主たる目的とするなどの一定の基準に適合している一般社団法人・一般財団法人は、行政庁(国または都道府県)から公益認定を受けることにより、公益社団法人・公益財団法人となります。

今回は、公益法人のなりかたや、そのメリット・デメリットなどを解説します。

公益法人制度の概要

昭和の時代から公益法人の制度は存在していました。

しかし、所管する官庁の天下り先となっていたことや、必ずしも公益性を担保できていない団体も公益法人となっていたりと、制度上の様々な問題点が指摘されるようになり、平成18年に法整備が整うなど、制度を大幅に見直すことになりました。

具体的には、官庁による許可制度から、社団・財団法人の設立は一定の要件を満たせば可能な仕組みとしつつ、公益性を有すると判断できる一般社団法人・一般財団法人のみ、公益法人となることができる仕組みに改められました。

図示すると、以下のとおりです。

参照:公益法人制度の概要(パンフレット)

一般社団法人・一般財団法人については、設立そのものが株式会社のように簡易になり、公益法人になるための認定の基準もしっかり整備された形です。

一般社団法人・一般財団法人から公益社団法人・公益財団法人となるには、「公益認定」という手続きを経なければなりません。
公益認定は要件が多く、当然ですがそれぞれの基準に合致しなければ認定を受けることはできません。

公益認定を受けるメリット・デメリット

公益認定を受けると得られるメリットも大きいですが、デメリットも存在します。また、事務手続きも増えるため、本当に公益認定を受けるのかの判断が必要です。

1 公益認定を受けるメリット

(1)税制上のメリット

公益認定を受けると、公益目的事業と呼ばれる事業区分については非課税となります。
このことにより、通常の法人であれば申告・納付する必要がある法人税が減免となります。

また公益認定を受けた法人は「特定公益増進法人」というものに該当するため、この法人に寄附を行った個人や法人が寄附金の税務控除を受けられる仕組みもあり、寄附を集めやすくなります。

加えて、少し細かい話ですが、公益認定を受けた法人も収益事業を行えば課税されますが(例えば保有している不動産の運用など)、得られた収益を公益事業に支出することもできるようになります。

これを「みなし寄附金」と呼びますが、一般社団法人・一般財団法人にはないメリットで、このことにより、収益事業から支出した金額を法人税法上の損金に算入でき、節税効果があります。

(2)名称のメリット

公益認定を受けると、法人の名称に「公益社団法人」または「公益財団法人」の用語を加えなければなりません。

このことは、自らの法人が公益法人であることをアピールできるとも言え、公益性を持っていることを自団体の武器にすることができます。

対外的な印象が良くなるといった抽象的なメリットから、国・自治体その他公益的なセクターとの事業も増えることが予想されます。

2 公益認定を受けるデメリット

(1)認定を受けるまでの労力

公益認定には多くの要件が定められており、それらをクリアするのは一筋縄ではいきません。

定款の変更や理事その他の機関の構成の見直しが必要となる場合もあり、単なる書類上の作業だけでは足らない可能性もあります。

(2)事業の制約

公益認定を受けた場合、公益認定事業を守る必要があり、その範囲は、公益目的事業が支出ベースで全体の事業(公益目的事業+収益事業+管理運営のための費用 の合計)の50%以上としなければなりません。

管理費が大きい場合、思ったより公益目的事業の支出が少ない場合など、50%を下回る要素は比較的多く、基準を割り込むと行政庁からの勧告・命令、最悪の場合は認定取り消しの処分を受ける可能性もあります。

(3)事務負担の増加

上記のデメリットでも取り上げましたが、事業の制約が多いということは、その遵守のための事務的な負担も増えるということになります。

公益目的事業への支出を増やす、管理費を縮減するなどのほか、それぞれの部門を区分経理することも求められます。

さらに、公益認定を受けた法人は、一般社団法人・一般財団法人に比べ、求められる情報公開の範囲も多く、その対応も一苦労です。

公益認定を受ける判断

上記のデメリットを踏まえても、メリットの方が大きいと判断でければ、公益認定を受けるべきです。

コンプライアンス遵守やガバナンス確保が今まで以上の求められていくことが予想される昨今にあって、公益認定を受けることにより、それらへの対応がしっかり果たされていることの証明にもなります。

多くの社団法人・財団法人が公益認定を受けており、決して不可能なハードルではないことから、公益認定制度を有効に活用してほしいと思います。

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